情報地質 第11巻 第1号 11-24項,2000年
Geoinformatics, vol.11, no.1, pp.11-24, 2000
 


傾斜量図を用いた地形・地質の判読

神谷泉・黒木貴一・田中耕平**

Interpretation of Geomorphology and Geology using Slope Gradation Map

Izumi KAMIYA, Takahito KUROKI and Kohei TANAKA

1999年9月30日受付,2000年2月24日受理第10回日本情報地質学会講演会(1999年6月,札幌)で一部発表* 建設省国土地理院 Geographical Survey Institute, 1, Kitasato, Tsukuba, Ibaraki, 305-0811, Japan.** 信州大学農学部 Faculty of Agriculture, Shinshu University, 8034, Minamiminowa, Nagano, 399-4528, Japan.Abstract: We produced slope gradation maps, which show dip of ground as gray scale image, from Digital Map 50m Grid (Elevation), precise DEM data covering the whole Japan. We tried to interpret geomorphology and geology using the maps. The maps are useful in interpreting geomorphology of lowlands (terraces), mountains, volcanoes and landslide areas. The maps are also useful in interpreting geology, that is lineaments suggesting tectonic line and fault, and boundary of distribution area of some kinds of rocks. Prewitt type or Sobel type operator is better than Roberts type operator to calculate dip for the interpretation. We compared slope gradation map with other types of map describing topography, that is contour map, DEM image and hill shading map. Slope gradation map is the best among them for interpreting geomorphology and geology.

"Brightness," "uniformity," "line intervals," "sharpness" and "directional characteristics" are basic interpretation keys for slope gradation map. "Brain like pattern," interlocking structure of bright lines corresponding to ridges and ones corresponding to valleys on a dark background corresponding to slopes, is one of the most important interpretation key in mountains. In conclusion, slope gradation map is very important material for investigation of geomorphology and geology.

Key Words: slope gradation map, interpretation, geomorphology, geology, DEM

要旨: 数値地図50mメッシュ(標高)を用い,地表面の傾斜を濃淡画像で表現した傾斜量図を作成し,これを用いた地形・地質の判読を試みた.傾斜量図は,低地(段丘),山地,火山,地すべり地の地形の判読に有用であった.また,構成地質に関しては,構造線・断層の候補となるリニアメント,ある種の岩石の分布域の境界を判読できる場合があった.判読のための傾斜の計算方法としては,Roberts型よりもPrewitt型あるいはSobel型が優れている.傾斜量図は,他の地表面の表現手法と比べ,いくつかの点で優れている.上記の判読で使用している基本的な判読キーは,「明るさ」,「一様性」,「線間隔」,「鮮明さ」,「方向性」であった.また,山地においては,尾根と谷に対応する明るい線が互いにがっちりかみ合った模様である「脳状模様」が有用な判読キーであった.以上を総合し,傾斜量図は,地形・地質を調査する上で重要な資料となりうる.

キーワード: 傾斜量図,判読,地形,地質,DEM

1.はじめに

数値標高モデル(DEM)を用いると,地表面の最大傾斜(以下,単に「傾斜」と呼ぶ)を広範囲にわたって容易に算出できる.傾斜は,地形を分類し,また地形を基に構成地質を推定するための最も重要な地形量である(鈴木,1997).このため,DEMから算出した傾斜は,数値計算および傾斜の読定に利用されてきた.前者の例としては,多変量解析による表層土厚の推定(沖村・渡邊,1993),自動地形分類(岩橋・神谷,1995)がある.後者の例としては,分級した傾斜を地形図上に印刷し傾斜を読定したもの(田中ほか,1985),GISを用いて傾斜と崩壊地の分布を重ね合わせて表示し傾斜を読定したもの(西,1994)がある.これらはいずれも,ある格子点の傾斜を単独で利用しようとするものである.

これに対し,活火山においては火山災害の調査と予測のため,傾斜を図として表示し(以下,「傾斜量図」と呼ぶ),人間の判断力を用いて地形区分に利用することも行われている(以下,「地形の判読」と呼ぶ).これは,注目している部分の多数の格子点の傾斜を空間パターンとして認識するものである.田中ほか(1985)は,三宅島において,埋没したカルデラ,溶岩流,爆裂火口の噴出物によって形成された平坦面を認定し,断層および大規模崩壊地が存在する可能性を指摘した.関口・岩橋(1992)は,この手法を雲仙に適用し,尾根線,谷線,カルデラ壁,断層,河川の抽出が可能であると報告している.さらに岩橋(1992)は,磐梯山を対象として,傾斜量図が溶岩流の末端の崖,段丘崖等の地形区分の境界線をよく捉えると報告している.この手法は,建設省国土地理院における火山土地条件図作成作業に応用されている(岩橋・久松,1997;岩橋ほか,1999).これらの研究は,主に火山体を対象にしているため,傾斜量図を用いた地形・地質の判読を体系化するには至っていない.

本稿では,上記の研究を発展させ,@活火山以外の地域においても傾斜量図による地形・地質の判読事例を示し,A傾斜量図に対する判読キーを整理するとともに,B傾斜量図の作成方法の比較,C傾斜量図と他の地表面の形状を表す図との比較を述べる.なお,地質の判読は,岩石の種類(型),産状,断層の推定をさす.本研究で作成した傾斜量図は,国土地理院のホームページ(http://gisstar.gsi.go.jp/SlopeMap/index.html)で公開する予定である.

これまで,傾斜の緩急を濃淡を用いて表示した平面図は,傾斜分布図あるいは傾斜分級図と呼称されてきた.しかし,傾斜が地上のすべての点に対して定義できることから,筆者らは,「傾斜分布図」は必ずしも適切な用語ではないと考える(これに対し,「急傾斜地」は地表の一部のみを占めるため,「急傾斜地の分布」は適切であると考える).通常,「分布図」というと,例えば工場の分布を点(シンボル)で示す,分布密度を濃淡で示す,分布範囲を面で示すような図を指す.また,本研究では,傾斜を分級せずに図を連続階調の画像として表現するため,「傾斜分級図」も適切ではない.このため,本稿では傾斜を連続量としてとらえるという意味で「傾斜量図」と呼ぶこととした.

2.方法

本研究では,数値地図50mメッシュ(標高)を用い,1次メッシュ(緯度40分ごと,経度1度ごとに区切った区画;概ね1/200,000地勢図に対応)ごとに全国の傾斜量図を作成した.第1図のように,東(右)方向にX軸を,南(下)方向にY軸をとる.添え字は,YXの順序とする.いま,対象とする格子点の標高をH22とし,これに隣接する格子点の標高をH11,H12,H13,H21,H23,H31,H32,H33とする.X方向の傾斜SxおよびY方向の傾斜Syから,(1)を用いて傾斜Sを計算できる.

Sx,Syの算出には,いくつかの方法が提案されている.Horn(1981)は (2)および(4)を用い,沖村ほか(1991)は(3)を用いた.

正方格子(Dx=Dy)の場合,(2),(3),(4)による傾斜Sは,それぞれ,画像処理におけるRobertsオペレーター,Prewittオペレーター,Sobelオペレーター(日本工業技術センター編,1985;高木・下田監修,1991)に相当するものである.以下,これらの計算式をRoberts型,Prewitt型,Sobel型と呼ぶ.また,これらを用いて求めた傾斜Sは,それぞれ2×2近傍内の標高値,3×3近傍内の標高値(重み一定),3×3近傍内の標高値(距離の逆2乗重み)を用い,最小2乗法で求めた平面の最大傾斜に一致する.なお,Dx,Dyは緯度φの関数であるため,本研究では,緯度(画像のライン)ごとにDx,Dyを計算した(Dx = NΔλcosφ,Dy = MΔφ;φは緯度;Δφ,Δλはラジアンを単位とした緯度方向,経度方向の格子間隔;M,Nは子午線曲率半径,卯酉線(ぼうゆうせん)曲率半径(佐藤,1984)).

岩橋(1994)は,傾斜量図による地形の判読において,傾斜の計算式の違いが判読結果に及ぼす影響は少ないと報告している.今回,浅い谷が格子間隔(約50m)の数倍の間隔で繰り返す静岡県牧の原台地において,計算式の違いによる地形の判読性を比較した(第2図).Roberts型では孤立した明るい点が多数出現し,尾根線・谷線が途切れるため,他の計算式と比べ,地形の判読には適していないことが明らかになった.とくに,第2図の円内で比較すると,Prewitt型,Sobel型では北東−南西の方向性を認識できるのに対し,Roberts型ではそのような認識が困難である.一方,Prewitt型とSobel型の違いはわずかである.本研究では,Prewitt型((3)式)を用いた.

判読に用いた傾斜量図は,地質図と重ね合わせるためにUTM座標系に投影し,傾斜が急になるにつれて白から黒にかわるグレースケール画像(連続階調白黒画像)を用いて,縮尺1/200,000で出力した.
 
 

判読に用いた傾斜量図は,地質図と重ね合わせるためにUTM座標系に投影し,傾斜が急になるにつれて白から黒にかわるグレースケール画像(連続階調白黒画像)を用いて,縮尺1/200,000で出力した.
 
 

3.判読事例

3.1 河岸段丘分布域

第3図は,多摩川中流域の段丘分布域の傾斜量図である.第3図の(a)と(b)は同一の傾斜量図であるが,(b)は緩傾斜部分を特に詳細に表示したものである.

第3図では,明るい範囲(A,A',A'';これらは,暗い線(D')で区分できる),やや暗い範囲(B),明るい線(C),暗い線(D,D')を識別できる.日本第四紀学会編(1987)の地形・地質・活構造図と対照すると,Aの地形は低地,A'は低位段丘面,A''は中位段丘面,Bは高位段丘面,Cは段丘を開析する谷の谷底,D,D'は各段丘の段丘崖である.開析のあまり進んでいない段丘の境界(段丘崖)は,傾斜量図上で暗い線(D')として容易に判読できる.開析谷は,明るい線(C)とその両側に沿う暗い線(D)の組み合わせとして認識できる.本稿では,これを「暗明暗構造」と呼ぶ.段丘の開析は,段丘面への開析谷の侵入であり,傾斜量図上では明るい範囲への「暗明暗構造」の侵入としてとらえることができる.この状況は,高位段丘(B)で確認できる.なお,高位段丘より更に開析が進んだ浸食小起伏面(E付近)では,A,A',A'',Bの様な広がりをもつ明るい範囲は,ほとんど判別できない.

3.2 典型的な山地の地形

第4図は,関東山地の一部の傾斜量図である.第4図には,暗い背景の中に,明るい線(A,B,C)が多数存在する.明るい線は樹枝状をなしており,尾根線(A)または谷線(B,C)に相当する.尾根線と谷線に相当する明るい線は,互いに交わることがなく,がっちりとかみ合っている.以上の様子は,大脳皮質のしわに似ているため,本稿ではこれを「脳状模様」と呼ぶ.典型的な山地では,傾斜量図上に「脳状模様」が現れる.「脳状模様」は,多数の「暗明暗構造」が,明るい線(尾根)を挟んで密着したものとみなすことができる.なお,傾斜量図上での尾根線と谷線の区別は,個々の線を平地まで追跡しない限り困難である.しかし,谷線では幹にあたる部分が蛇行し(C),あるいは線幅が広いことがあり,この場合は両者を容易に区別できる.

3.3 火山の地形

第5図は,火山における傾斜量図の例であり,図の東側部分に岩手山がある.第5図の範囲には「脳状模様」がなく,傾斜量図の様相が,前述の典型的な山地とはかなり異なる.岩手山の中央に,明るい丸い範囲(A),円弧状のやや幅が広い暗い線とその外側に沿う明るい線の組み合わせ(B)およびその内側ののっぺりとした明るい範囲,岩手山の中央部から放射状に延びる「暗明暗構造」(Cなど),中央部から周縁部に向かって同心円状に暗から明へと漸移する範囲(D)がある.岩手山の北西部には,明るい範囲(E)とそれを囲む暗い線(E')がある.なお,EおよびE'の様相は,「3.1河岸段丘分布域」で触れた段丘地形と類似しているが,@明るい範囲(E)が舌状をなしている,A先端では丸みを帯びて幅が広い,B舌の根本(図上で下)に向かうにしたがい次第に幅が狭くなる,C暗い線(E')も根本に向かうにつれてはっきりしなくなるという特徴を有している.荒牧ほか(1989),高橋・小林(1999),中川(1987),地形図を参照すると,Aは薬師岳の山頂火口,Bは旧岩手(西岩手)カルデラのカルデラ壁,Cは開析谷,Dは山腹の平滑斜面,EおよびE'は溶岩流地形に対応する.段丘の場合と同様に,火山においても「暗明暗構造」は開析谷に対応する.傾斜量図の判読により,旧岩手カルデラ内の御苗代火口(F)付近から噴出した溶岩が,カルデラ壁(B)の開口部から流出して山腹斜面を下り,溶岩流地形(E,E')をつくったと推定できる.これは,旧岩手第3活動期において御苗代火口丘から流出した溶岩流がカルデラ開口部からカルデラ外に流れ末端は松川沿いにまで達している(中川,1987)という知見と調和する.

第6図に,新潟県東部守門岳(すもんだけ)周辺の傾斜量図を示す.ここには,第5図の岩手山とは異なり,「脳状模様」が現れる.しかし,@第6図の破線の範囲には,第5図のB(旧岩手カルデラのカルデラ壁)と同様に,円弧状のやや幅が広い暗い線とその外側に沿う明るい線の組み合わせがあり,Aその内側は外側と比べやや明るく,B破線の範囲を中心として,放射状に延びる白い線が卓越している.これらの特徴から,守門岳は火山であり,破線の範囲とその内側は北東方向に開いた馬蹄カルデラであると推定できる.これは,既存の知見(赤石・茅原,1996;角ほか,1985)と調和する.

岩手山の東北部分の新岩手期(6千年以上前〜現在;高橋・小林,1999)の噴出物が分布する範囲(中川,1987)は,のっぺりとしていて同心円状に暗から明へと漸移する範囲(第5図D)と認識される.岩手山の西側,南側部分の旧岩手第1期〜第3期(数十万年前〜3万年前;荒牧,1989)の噴出物が分布する範囲(中川,1987)では,Dと同様の範囲の中に,放射状に延びる「暗明暗構造」(開析谷;第5図Cなど)が存在する.更に古い守門火山(鮮新世〜更新世前期;赤石・茅原,1996)では,このような同心円状の範囲は認識できず,代わって,放射状に延びる白い線が卓越する「脳状模様」が現れる.この違いは,火山体の開析の程度の違いによるものである.また,比較的新しい火山では,傾斜量図上で第5図EおよびE'のような溶岩流地形が判読できることがある.

3.4 地すべり地の地形

大沢・須田(1980)によれば,第5図の西側部分は,更新世以降の安山岩質溶岩および火砕岩からなる山地である.ここには,「脳状模様」がなく明るい部分と暗い部分が不規則に混在する範囲(G)と,これを囲む幅が広い半円状の暗い線(H)がある.地形図を参照すると,この地域のGのような範囲には,湿地および池沼が多く分布する.清水ほか(1984)によれば,Gは地すべりの移動土塊,Hは対応する滑落崖である.傾斜量図上で,GとHのような対は,地すべり地形と判読できる.清水ほか(1984)は,この地すべりのほかにも大小さまざまな規模の地すべり地形を記載しているが,傾斜量図上では,GとHの対より規模の小さい地すべり地形を個々に判別することは難しい.しかし,地すべりが密集している範囲(I)は,Gと似て,@「脳状模様」がなく,A暗い範囲と明るい範囲が不規則に混在し,B平均すると少し暗いため,地すべりの分布を推定できる.

この他にも,栗駒山周辺の地すべり(清水ほか,1982),善光寺地震による虚空蔵山地すべり(古谷,1996)を傾斜量図上で判読できた.

以上のように,傾斜量図上に「脳状模様」がみられない山地においては,火山地形あるいは地すべり地形を推定できる場合が多い.

3.5 構造線・断層

第7図は,伊那谷とその周辺の傾斜量図である.これを活断層研究会編(1991)と比較すると,傾斜量図上で中央構造線,馬籠峠断層に沿った明るい線が明瞭に認識できる.これは,断層に沿った直線谷である.また,阿寺断層,下条山麓断層,屏風山断層に沿っては,断層の両側で傾斜量図の明るさがはっきり異なる(阿寺断層では北東側が,下条山麓断層では南西側が,屏風山断層では南東側が暗い).筆者らは,断層の垂直変位により断層の両側で浸食速度の違いが生じ(片側で堆積が生ずる場合を含む),あるいは断層の変位により断層の両側で岩石の種類が違いその耐浸食性が異なるため,断層の両側で傾斜が異なり明るさの違いが生じたと考える.他の地域においても,千々石断層,野島断層,有馬−高槻構造線,花折断層,跡津川断層,糸魚川−静岡構造線,丹那断層,北武断層,棚倉構造線,双葉断層等,多数の構造線・断層に対応するリニアメントを容易に判読できた.

第8図は,新潟県東蒲原郡三川村の沼越峠断層付近の傾斜量図である.角ほか(1985)によれば,沼越峠断層は,図上下方から点Bまで続いている.傾斜量図上で,断層に対応するリニアメントが容易に判読できる.区間@〜Aでは,断層の東側が西側と比べ著しく明るい.筆者らは,断層の西側の花崗岩に比べ,東側の凝灰岩が浸食されやすく,浸食が十分進んだため傾斜が緩やかになったと考える.区間A〜Bでは,断層の両側が同年代の花崗岩(五頭花崗岩:90〜92Ma(角ほか,1985))であるにもかかわらず,断層の東側がやや明るい.本断層では西側が隆起している(活断層研究会編,1991)ことから,筆者らは,西側部分で浸食がより活発となり,傾斜が急になったと考える.区間B〜Cは,区間A〜Bと同様に断層の東側がやや明るいが,角ほか(1985)には断層の記載がなかった.

以上を総合し,沼越峠断層は点Cまで続いていると推測した.そこで,他の既存資料を調べたところ,経済企画庁総合開発局(1973),国土庁土地局 (1982),活断層研究会編(1991)における断層の記載は,角ほか(1985)と同様であったが,北陸地方土木地質図編纂委員会編(1990)では,推測と同じく点Cまで沼越峠断層が延びていると記載されていた.以上の経緯から,筆者らは,傾斜量図の観察のみにより,構造線・断層の存在を推測できる場合があると考える.

3.6 岩石の種類

本節では,風化・浸食に対する抵抗力が岩石の種類によって異なるため,形成される地形の違いを通して,岩石の種類の違いを傾斜量図上で判読できる例を示す.

第9図は,伊吹山北方の貝月山付近の傾斜量図である.図の線で囲まれた範囲は,周りと比べて@全体的に明るく,A明るい線の間隔が狭く,B「脳状模様」が不明瞭であるため,その周りと区別できる.脇田ほか(1992)によれば,囲まれた範囲には白亜紀中〜後期の花崗岩(貝月山花崗岩)が分布し,その周りにはそれ以前の堆積岩類(一部溶岩,火山砕屑岩を含む)が分布する.上記の特徴のうち,Aは,花崗岩分布域は谷密度が高い(池田,1998)という知見に調和する.岩手県一関市の東方の白亜紀花崗岩類分布域(東北地方土木地質図編纂委員会編,1988)においても,同様の特徴(上記@〜B)が確認できる.

第10図は,神威古潭変成帯の蛇紋岩分布域を含む地域の傾斜量図である.蛇紋岩分布域は,「脳状模様」がはっきりせず,ぼんやりしている(細かい白い線をはっきり認識できない)ため,周囲の他の岩石の分布域と容易に区別できる.上記の視覚的特徴は,明瞭な尾根・谷が少ないことに対応する.これは,蛇紋岩山地では深い谷が少ない(小林,1999)という一般的な知見と調和する.第10図の蛇紋岩分布域を詳細に観察すると,尾根に相当する明るい線の幅が,谷に相当する明るい線の幅より広いことがわかる.これは,蛇紋岩山地の尾根は丸みを帯びている(鈴木,1984)という知見と調和する.三郡変成帯の蛇紋岩分布域でも,傾斜量図上に同様のぼんやりした範囲が存在する.神威古潭変成帯の例とは違い,その範囲は必ずしも地質図(寺岡ほか,1996)の蛇紋岩分布域に一致しないが,大局的にはこれと類似している.

第11図は,北海道枝幸郡歌登町南部(1/25,000地形図「本幌別」付近)の傾斜量図である.この地域では,鮮新世の堆積岩中に,鮮新世の安山岩体が貫入している(山口・須田,1981).貫入部分は,傾斜量図上で水玉状に浮き上がって見え,容易に識別できる.この視覚的特徴は,@貫入岩体の縁辺部の傾斜が大きく,A内部の傾斜が小さく,B谷が発達していないことに対応する.筆者らは,この地域の安山岩体が堆積岩と比べ浸食されにくいため,上記の現象が生じたと考える.

以上のように,傾斜量図上で特定の岩石または岩体の分布域の境界を判読できる場合がある.

4.他の地表面の表現手法との比較と傾斜量図の有用性

ここでは,地形・地質を判読するための資料として,傾斜量図(第12図(a))以外に,地表面の表現手法として,等高線図(第12図(b)),DEM画像(標高をグレースケール画像として表現した図;第12図(c)),陰影起伏図(ある方向から地表面に光を当てた状況を再現する図;第12図(d),(e))をとりあげ,これらを比較検討する.

4.1 等高線図との比較

等高線図(あるいは等高線を含む地形図)は,地形・地質の判読に有効である(鈴木,1997).特に,今回使用した数値地図50mメッシュ(標高)は,1/25,000地形図から作成されたものであるため,同地形図は,数値地図50mメッシュ(標高)から作成したいかなる図よりも多くの情報を含んでいる(情報を含んでいることは,必ずしもそれを判読によって取り出せることを意味しない).

しかし,等高線図の判読には,一般にある程度の熟練と時間を要する.例えば,第12図に示す地域は,準平原(A,B;記号は,すべて等高線図上に記載)とこれを浸食する河谷(Cとその枝谷)に分けることができるが,等高線図では,傾斜量図ほど両者を明瞭に区別できない.地形判読のためには,図を均質な領域に分割する必要があり,傾斜は均質性を判定するための最も重要な地形量である(鈴木,1997).筆者らは,この分割作業は傾斜を等高線の密度におきかえた等高線図上で行うより,傾斜をそのまま表示した傾斜量図上で行うほうが容易であるため,傾斜量図を用いるほうが地形・地質をより容易に判読できると考える.

また,傾斜量図は,等高線図と比べ広い範囲を効率的に判読することができる.数値地図50mメッシュ(標高)から作成された傾斜量図は,多くの場合,縮尺1/200,000程度で表示すると見やすい.一方,この傾斜量図の原データは1/25,000地形図(等高線図)であり,地形図を1/2に縮小して(縮尺1/50,000)判読に使用したとしても,傾斜量図の1/16(縦横それぞれ1/4)の範囲しか観察できない.第12図(b)では等高線間隔を50mとしているが,等高線間隔をこれより狭めると,等高線が混みすぎて判読が困難となる.この等高線間隔は,日本における地形図の縮尺と等高線間隔の関係を基にすると,概ね縮尺1/100,000の地形図に対応している.第12図(b)は概ね縮尺1/200,000で表示されており,地形図を1/2に縮小して観察するという仮定は,概ね妥当である.

以上をまとめると,等高線図は地形・地質に関して傾斜量図と同等以上の情報を含んでいるが,判読の容易さと効率の面からは,傾斜量図のほうが格段に優れている.

4.2 DEM画像との比較

DEM画像は,画像全体に合わせて(例えば,標高が一番高い点を黒,一番低い点を白に)輝度を調節すると,注目している領域内の白黒の差が小さくなり(ダイナミックレンジが狭くなり),地形・地質の判読には適さない.複数の出力図を用意する,あるいは画面上でその都度輝度を調節することも可能であるが,いずれも非効率的である.これに対し,陰影起伏図と傾斜量図は,DEMに微分演算を施したもの(隣接する格子点との間の標高差のみに依存するデータ)であるため,局所的にも十分なダイナミックレンジを有する.

4.3 陰影起伏図との比較

陰影起伏図は,地表面の形状を直感的に把握するのに適しており,地形・地質の判読に有用である.しかし,同じ地形でも,光源の方向によって図から受ける印象が大きく異なる.例えば,第12図(d)では,光源と直交する方向に延びるI付近の尾根の両側の地形が同じ性質か否か,判定できない.特に,光源の方向と平行な崖は,判読が難しくなる(例えば,第12図(d)における直線GHに沿う谷).光源の方向の異なる複数の陰影起伏図を用意することも可能であるが,判読効率が低下するほか,対策としても不十分である.以下に,不十分である例を示す.

まず,準平原上にある第12図のA付近,開析谷が発達するD付近,E付近を比較する.傾斜量図ではD付近とE付近は類似しており,A付近とははっきり区別できる.北西方向を光源とする陰影起伏図(第12図(d))では,A付近,D付近,E付近はそれぞれ性質が異なると解釈されるが,視覚的に最も目立つ判読キーである「明るさ」(後述)で判別すると,A付近とE付近がより類似している.同様にして,北東方向を光源とする陰影起伏図(第12図(e))では,A付近,D付近,E付近は,それぞれ性質が異なると解釈される.以上,2方向の陰影起伏図を用いても,傾斜量図の判読から得られた結果を直感的に引き出すことができない.これを得るためには,2つの陰影起伏図を眺め,頭の中で地形モデルを構成するという手続きが必要である.

つぎに,傾斜量図では第12図のF付近の準平坦面を直感的に認識できるのに対し,陰影起伏図では直感的には認識できない.また,2つの陰影起伏図を組み合わせても,F付近に準平坦面のある地形モデルを頭の中で構成することは困難で,この方法による判別も難しい.

直線谷によるリニアメントの判読に関しては,多くの場合,陰影起伏図を用いるほうが判読が容易である.陰影起伏図上で直線谷によるリニアメントは,光源の方向とリニアメントの方向が平行に近い場合は,リニアメントを境界とする明暗のパターンの不一致(リニアメントの両側で尾根・谷の位置が食い違うことに対応)として認識される.また,それ以外の場合は,リニアメントを境界とする明るさの不連続(リニアメントの両側の斜面方位の違いに対応)として認識される.一方,傾斜量図上では,白い線として認識される.つまり,直線谷によるリニアメントは,陰影起伏図では面の境界として,傾斜量図では線として認識されるが,後者では認識すべき対象が細いため,判読がより困難となる.なお,第12図(d)の直線GHに沿う谷は,谷に沿った断層変位がなく,陰影起伏図上で谷の両側の明暗のパターンが一致するため,傾斜量図に比べ判読が難しくなっている.

一方,傾斜量図には,@尾根と谷を直感的に区別しにくい(両方とも明るい線に見える),A傾斜方向を直接判読できない,B広域の地形を把握しにくいという欠点がある.@は急峻な山地で顕著であるが,急峻な山地では,尾根と谷を区別せずに「脳状模様」と認識しても,判読の大きな障害とはならない.Aは扇状地の判読では大きな障害となるが,それ以外の地形では,判読の大きな障害とはならない.なお,数値地図50mメッシュ(標高)から作成した傾斜量図では,緩傾斜地において,強調表示を行うことにより等高線を判読できる(第3図(b)).これは,傾斜が急な部分が等高線に沿って分布していることに相当し,傾斜量図の定義からすると好ましくない性質である(この原因は,傾斜量図の作成方法ではなく,元データである数値地図50mメッシュ(標高)にある).しかし,現実には緩傾斜地,特に扇状地の判読に有用である.Bは,例えば,谷が発達していない富士山は,谷が発達している愛鷹山と同規模の山のような印象を受けるということであり,陰影起伏図にも同様の欠点がある.両者とも,DEMに微分演算を施すため,広域的な特徴が失われるのはいたしかたない.なお,この欠点は,対象地域の地形の概要に関する予備知識がない場合は重大な障害となるが,予備知識があれば,それほど大きな障害とはならない.

4.4 まとめ

以上をまとめると,地形・地質を判読するための地表面の表現手法として,傾斜量図が非常に有力である.

「3.判読事例」において傾斜量図の有用性を例示したが,地表面の形状が主に等高線図の形態で地形・地質の調査に利用されてきたことと,ここでの比較結果を考え合わせると,理論的にも傾斜量図が地形・地質の調査に有用であるといえる.

5.判読キー

ここでは,傾斜量図の判読に使用した判読キー(判読の際に注目すべき点)についてまとめる(第13図,第1表参照).第13図(a)は段丘,(b)は浸食が進んでいない火山の山麓,(c)は典型的な山地,(d)は蛇紋岩山地,(e)は浸食がある程度進んだ火山の山麓,(f)は分水嶺を挟む山地,(g)は蛇紋岩(図上左)と堆積岩(図上右)の分布域の傾斜量図である.以下では,各判読キーに対する@傾斜量図の視覚的特徴,A傾斜の数学的特徴(傾斜Sを平面座標(x,y)の関数S(x,y)と考えた場合のS(x,y)の特徴)およびB地形の特徴を述べる.なお,これらは,1地点に対するものではなく,一定の領域内の傾斜量図,傾斜,地形の特徴である.第1表傾斜量図の基本的な判読キー
判読キー
傾斜量図の視覚的特徴
傾斜の数学的特徴
(傾斜Sを平面座標(x,y)の関数S(x,y)と考えた場合の,S(x,y)の特徴)
地形の特徴
明るさ
明るい. 平均値が小さい 傾斜が緩やか.
暗い 平均値が大きい. 傾斜が急.
一様性
一様性が高い(明暗のばらつきが小さい,のっぺりしている). 標準偏差が小さい. 尾根・谷が発達していない.
一様性が低い(明暗のばらつきが大きい). 標準偏差が大きい. 尾根・谷が発達している.
線間隔
線間隔が狭い. 高周波成分が多い. 谷密度が高い.
線間隔が広い. 高周波成分が少ない. 谷密度が低い.
鮮明さ
ぼんやりしている(明暗の差が小さく,線間隔が広い). 標準偏差が小さく,高周波成分が少ない. 尾根・谷が不明瞭で,明瞭な谷の谷密度が低い.
鮮明(明暗の差が大きく,線間隔が狭い). 標準偏差が大きく,高周波成分が多い. 尾根・谷が明瞭で,明瞭な谷の谷密度が高い.
方向性
方向性がない. どの方向にも,自己相関性が低い. 尾根・谷の方向性がはっきりしない.
方向性がある. 特定方向の自己相関性が高い. 尾根・谷の方向性が顕著,あるいはリニアメントが存在.

5.1 明るさ

第13図の(a)と(b)は,「明るさ」を判読キーとして区別できる.傾斜量図上で明るい部分は,傾斜の平均値が小さく,傾斜が緩やかである.逆に暗い部分は,傾斜の平均値が大きく,傾斜が急である.例えば,第13図(f)では,「明るさ」を判読キーとして,図内を左右の2つの領域に区分できる.山地と低地の区分,段丘面と段丘崖の区分は,「明るさ」だけで可能である.「明るさ」は,最も重要な判読キーである.

5.2一様性

第13図(b)と(c)は,「明るさ」(傾斜の平均値)は同じであるが,明暗の差の大小,すなわち「一様性」を判読キーとして区別できる.傾斜量図上で「一様性」が高い(明暗のばらつきが小さく,のっぺりしている)部分は,傾斜の標準偏差が小さく,通常,尾根・谷が発達していないことに対応する.逆に「一様性」が低い(明暗のばらつきが大きい)部分は,傾斜の標準偏差が大きく,尾根・谷が発達している.「一様性」は,開析の進んでいない火山と通常の山地の区別,新しい段丘と古い段丘の区別に有用である.

5.3 線間隔

第13図(c)と(d)は,「明るさ」(傾斜の平均値),「一様性」(傾斜の標準偏差)はともに同じであるが,明るい線の間隔(以後,「線間隔」と呼ぶ)を判読キーとして区別できる.傾斜量図上で「線間隔」が狭い部分は,傾斜に高周波成分(傾斜S(x,y)をフーリエ変換した場合の波長が短い成分)が多く,谷密度が高い.逆に「線間隔」が広い部分は,傾斜に高周波成分が少なく,谷密度が低い.「線間隔」は,花崗岩分布域の判読に有用であった.

5.4 鮮明さ

第13図(g)では,図内を左右の2つの領域に区分することができる.左右の「明るさ」(傾斜の平均値)は,ほぼ等しい.両者の違いは,左側は右側と比べ,「一様性」が高く,「線間隔」が広いことである.しかし,画像から受ける印象としては,左側がぼんやりしているのに対し,右側が鮮明(シャープ)であると表現したほうが,より自然である.この判読キーを,「鮮明さ」と呼ぶことにする.「鮮明さ」は,「一様性」と「線間隔」を組み合わせた判読キーである.傾斜量図上でぼんやりしている部分は,「一様性」が高いことに対応する尾根・谷が発達していないという特徴と,「線間隔」が広いことに対応する谷密度が低いという特徴を合わせもつ.すなわち,この様な部分は,尾根・谷が不明瞭で,明瞭な谷の谷密度が低い.逆に鮮明な部分は,尾根・谷が明瞭で,明瞭な谷の谷密度が高い.同様に,傾斜の数学的性質についても,「鮮明さ」は,「一様性」と「線間隔」の特徴を併せもつ.「鮮明さ」は,蛇紋岩分布域の判読に有用であった.

5.5 方向性

第13図(c),(d)では,傾斜量図上で明確な「方向性」を認識できないのに対し,(e)では,北北西−南南東の「方向性」を認識できる.「方向性」は,数学的には傾斜の自己相関性(傾斜S(x,y)を平行移動したS(x+Δx,y+Δy)がS(x,y)に似ているという性質)に対応し,地形としては,尾根・谷の方向性あるいはリニアメントに対応する.「方向性」は,断層,古い火山の判読に有用である.

5.6 その他の判読キー

以上の判読キーは,画像の基本的な特徴量に対応する基本的な判読キーである.これらの特徴量の空間パターンも判読キーとなり得る.「暗明暗構造」,「脳状模様」,「放射状」,「同心円状」,「水玉状」は,これにあたる.この様な判読キーは体系的に整理することが難しいため,ここでは,基本的な特徴量の空間パターンも上位の判読キーとなり得ることを指摘するにとどめる.

6.結論

本研究では,地表面の傾斜を濃淡画像として表現した傾斜量図を用い,地形・地質の判読を試みた.その結果,以下のことがわかった.

(1) 傾斜の計算式は,Roberts型よりPrewitt型またはSobel型が判読に適している.

(2) 地形・地質の判読を目的として,他の地表面の表現方法と比較すると,@傾斜量図はDEM画像より優れている.A判読の容易さと効率を考慮すると,傾斜量図は等高線図より優れている.Bリニアメントの判読については陰影起伏図が傾斜量図より優れているが,その他の点に関しては,傾斜量図が陰影起伏図より優れている.

(3) 傾斜量図は,低地(段丘),山地,火山,地すべり地の地形の判読に有用である.

(4) 傾斜量図において,@構造線・断層の候補となるリニアメント,Aある種の岩石の分布域の境界を判読できる場合がある.前者は,構造線・断層に沿った明るい線,あるいは構造線・断層の両側の明るさの違いとして,傾斜量図に現れる.

(5) 傾斜量図を判読するための基本的な判読キーは,「明るさ」,「一様性」,「線間隔」,「鮮明さ」,「方向性」である.また,より上位の判読キーとして,「暗明暗構造」,「脳状模様」,「放射状」,「同心円状」,「水玉状」が判読に有用であった.

(6) 山地において傾斜量図に「脳状模様」が現れない場合,火山,地すべり地の存在を推定できる場合が多い.また,「脳状模様」が確認しにくいことが特定の岩石の分布範囲の推定に役立つことがあった.

(7) 以上を総合し,傾斜量図は,様々な地形・地質調査において重要な資料となりうる.

7.今後の課題

第7図の領域Aは,周囲と異なる傾斜の緩やかな領域として識別できる.領域Aは,光明(東)断層(@)および笹山構造線(A)(国土庁土地局・静岡県地震対策課,1983)に挟まれる地域に,北東−南西方向の帯状をなしている.この帯の方向性およびその南側の傾斜量図上で認識される方向性は,地質図(山田ほか,1972;広川ほか,1976;中部地方土木地質図編纂委員会編,1995)に示されている地質境界の方向と概ね一致する.しかし,領域Aの北西縁(B),南東縁(C)は,これらの地質図に記載されている地質境界,構造線・断層とは一致しない.すなわち,傾斜量図上に現れた傾斜の緩やかな構造は,現状では,表層の岩石の種類または構造線・断層によって説明することができない.

この他にも,三郡変成帯における蛇紋岩分布域の例のように,山地において地質図上に表記されている地質境界と傾斜量図のパターンの境界が一致しないことがあり,既存の知識では説明できない.この原因の追究は,今後の研究課題である.

謝辞

本研究を進めるにあたって,国土地理院の長谷川裕之氏,早田靖博氏(重点研究支援協力員),小田切聡子氏,政春尋志氏,岩橋純子氏,関口辰夫氏,津沢正晴氏(現在バングラデシュに赴任中),匿名の査読者から,貴重な意見を頂いた.また,部外研究員として国土地理院に滞在された(財)日本地図センターの竹澤健氏,早田靖博氏(前出)には,データ変換,出力,点検に協力していただいた.この場を借りて,謝意を表します.

追記

本論文の共著者の一人である田中耕平氏が本稿執筆中の平成11年6月25日に逝去されましたので,最終稿および査読への対応は他の二人が行いました.同氏は,平成11年3月までは科学技術庁防災科学技術研究所(建設省国土地理院に併任),同年4月以降は信州大学農学部に在職されました.本研究は,同氏が傾斜量図の重要性を指摘され,著者3名の共同研究として実施しました.故人のご冥福をお祈りいたします.

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