SAR干渉画像判読カードのページ

 

1.はじめに

 「SAR干渉画像判読マニュアル」のページで示したように、一義的には地表変状の抽出はSAR干渉画像における周囲とは異なる発色域を見つけることによるのですが、マニュアルのプロセス2でも示したとおり、より信憑性の高い形で抽出を行うためには、地形図や空中写真などそもそも当該箇所が地すべり等の地表変状を起こすような場所なのかを把握しておくことも重要です。

 「SAR干渉画像判読カード」では、地すべりなどが実際に発生したところを中心に、当該箇所のSAR干渉画像がどのように表現されるのか、またSAR干渉画像をどのように解読すればよいのかについて示すとともに、加えて当該箇所の地形がどのようになっているのかについて地形分類図や空中写真を提示しています。そして、これらのデータを組み合わせることでより高い精度での地表変状の把握が出来ることを各カードで示しています。

以下では、SAR干渉画像判読カードの構成と利用法について解説しますが、もしも「SAR干渉画像判読カード」の事例をすぐに見たい場合は以下のリンクから直接見ていただくことが可能です。

SAR干渉画像判読カードの事例→ 石川県能登半島地区(ページがマニュアル外部にあるため、閲覧後はブラウザーの「戻る」ボタンで戻ってください) 山形県月山地区 秋田県東成瀬地区

 

2.SAR干渉画像判読カードの構成と利用法について

それでは、SAR干渉画像判読カードの構成と利用法について説明します。完成例の図(図1)をご覧ください。

(図1は解像度を落としていますので高解像度版はこちら(約3.6MBでご覧になれます)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


1 判読カードの事例(H19能登半島地震)

 

 まず、真ん中の段に配置されているのが、SAR干渉画像です。右側のものについて干渉縞が明瞭な部分等を拡大したものが左側です。

プロセス1を実施する段階では、とりあえずこのように見えるものをSAR干渉画像のアーカイブから見つければよいと考えていただければ結構です。幾つかのパターンを見ていただき、干渉縞の見え方等について感覚をつかんでいただければと思います。

 一方、プロセス2以降に進む場合ではもう少し踏み込んでみましょう。

 最初は、SAR干渉画像単独で分かることですが、真ん中にある矢印とカラーバーを見てください。図1の場合の観測は北行軌道で行われており、遠ざかる方向の変動は沈降・東向(近づく場合は逆方向)の移動と対応することが分かります。画像の中央が地表変状と思われるところであり、周囲から変色域に向かって色の変化を追います。真ん中左側の拡大画像において東側のaと見えるところからbに向かって色を追いかけると、青→黄→赤と変化します。つまり、近づく方向の色変化ですので、隆起又は西向きの変動と分かりますが、地すべり等で全体が隆起するとは考えにくいので、当該範囲は西向きの変動があったと推察できます。このあたりの手順は、本マニュアルにもありますが、各判読カードにも書かれていますので一つ一つSAR干渉画像の見方をフォローして行けば、移動方向や移動量の大小などが少しずつつかめてくるのではないかと思います。

 次に、地形分類図や空中写真を用意することで分かることですが、図1の場合は左上の図からこの場所は周囲と比較して東から西に向かって緩やかに傾斜しており、地すべり地の様相を示していることがわかります。これは、右上の写真の実体視でも確認できます。判読カードの事例では一部地すべり地ではないものも含みますが、多くの場合は防災科学技術研究所の地すべり地形分布図等で確認されている既存の地すべり地と重なります。はっきりと馬蹄形状の地表変状に相当する干渉縞が見られる場合は別ですが、干渉縞が不明瞭だったり、変位量が小さかったりする場合は、当該箇所が地すべり地かどうか等が、信憑性を判断する重要な根拠となります。

 

 多くの事例を見ることで、SAR干渉画像からの地表変状の抽出がより確実に出来るようになると思います。

 下記に事例を示しましたので、こちらを参考にしていただければと思います。

 

3.SAR干渉画像判読カードの事例

SAR干渉画像判読カードの実例は、石川県能登半島地区、山形県月山地区、秋田県東成瀬地区の3地区について作成しています。

それぞれの事例については、以下のリンク先に進んでください。

石川県能登半島地区のSAR干渉画像判読カード(ページがマニュアル外部にあるため、閲覧後はブラウザーの「戻る」ボタンで戻ってください)

山形県月山地区のSAR渉画像判読カード

秋田県東成瀬地区のSAR渉画像判読カード

 

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