SAR干渉画像で斜面変状を捉える仕組み

 

SAR干渉画像で斜面変状を捉えるためには、2時期のSAR干渉画像から地表の動きなどが捉えられることを前提としています。

その点について詳しく知りたい方は、国土地理院の干渉SARホームページなどをご覧ください。

 

1.SAR干渉画像で斜面変状を捉える仕組み

 

地震の発生前後のSAR観測データを処理することにより、地震に伴う地表変動などを捉えることが出来ます。

このことについては、阪神淡路大震災やそれ以降に解析されたSAR干渉画像がそれを示しています。

 

平成19年に発生した能登半島地震でも、地震の前後のSAR観測データを干渉処理することにより、地震に伴う地表変動を捉えられています(図1左図)。

もしも、震源からの距離に応じて一様に変動が発生していれば、図1中図のように綺麗な同心円状に近い変動が出るはずなのですが、図1左図の画像は必ずしもそうなってはいません。

そこで、実際に解析されたSAR干渉画像から、図1中図で示される地震に伴う広域的な変動を差し引いたものを作成しました(図1右図)。

 

1 平成19年能登半島地震の前後のデータによるSAR干渉画像(図は宇根ほか(2008)による)

 

図1右図は全体的に水色や青の色調となっていますが、AFの場所では周囲とは違った色調が確認されます。これらは、図1中図で示したような広域的な変動とは異なった局地的な変動を示していると考えられます。中でも、ABDEFの各箇所は既知の地すべり地と一致しており、地震に伴って地すべりが再滑動したことが想定されます。

また、Cは既知の地すべり地ではないのですが、拡大をすると図2のように馬蹄形状の発色が見られます。

 

図2 SAR干渉画像のうち初生地すべりが疑われる場所(図は宇根ほか(2008)による)

 

馬蹄形状の変状は地すべりがあることを示唆していますので、今まで知られていなかったところに新たに地すべりが発生したこと(言い換えれば初生地すべりが発生したこと)をSARで捉えられたのではないかと考えました。

 

2.参考文献

 

本マニュアルの背景となっている、SAR干渉画像から地すべりのような局地的な変動を把握する技術については、以下のような研究が背景となっています。

ご関心がありましたらご覧いただければと存じます。

 

1)宇根 寛・佐藤 浩・矢来博司・飛田幹男(2008) SAR干渉画像を用いた能登半島地震及び中越沖地震に伴う地表変動の解析.日本地すべり学会誌,vol.45no.2pp.33-39.[ 全文 | 要旨]

2)鈴木啓・雨貝知美・森下遊・佐藤浩・小荒井衛・関口辰夫(2010):山形県月山周辺におけるSAR干渉画像を用いた地すべりの検出,国土地理院時報,1201-7全文 | 要旨]

3)佐藤 浩・小荒井 衛・飛田幹男・鈴木 啓・雨貝知美・関口辰夫・矢来博司(2010):地すべり性地表変動に関するSAR干渉画像判読カードの提案.国土地理院時報,第120集,pp.9-15. 全文 | ]

 

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*1 表示されているSAR干渉画像は全て次によるものです:Analysis by GSI from ALOS raw data of JAXA, METI