ステップ1:SAR干渉画像を探す

1.はじめに

SAR干渉画像から地すべりなどの斜面変状を抽出するには、当然SAR干渉画像を用意しなければなりませんが、SAR干渉画像の生成には技術的なハードルがあり容易ではありません。

そのため、既成のSAR干渉画像から変状のある箇所を抽出することが最も手っ取り早い方法となります。

国土地理院では、火山地域46箇所、地盤沈下地域17箇所、地すべり地域3箇所の計66箇所についてSAR干渉画像の生成による定常監視を行っています。またこれらに加え、2011年3月の東北地方太平洋沖地震のような大地震が発生した場合には、その都度緊急監視を実施しています。これらは、国土地理院の干渉SARのホームページ(http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/sar/gsisar/gsisar.html)で閲覧できます。例えば、山形県月山地区の地すべりの監視であれば、11SAR干渉画像がアーカイブされていますので、これらを使うことが出来ます。

 

2.画像の選択

 SAR干渉画像は、2つの時期の間の地表変化を捉えたものですが、必ずしも斜面変状の把握に適した画像がいつでも得られるわけではありません。

 衛星「だいち」の観測周期は46日ですので、単純計算すれば1年に8回の観測機会があり、2つの時期の組合せは相当な数になりそうですが、多くの場合は適切に干渉しません。

 このため、国土地理院の干渉SARHPに掲載されているSAR干渉画像は、数多くの組合せのうち、適切に干渉したものだけを選んでいます。

 よって、基本的には見たい場所の画像を全て選んでもらってかまいません。

 例えば、干渉SAR-HPにおけるSAR干渉画像のアーカイブ例は以下のようになります。

(図1は山形県月山地区の例:http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/sar/result/sar_data/landslide/gassan.html(8番目の画像を掲載))

 図1 SAR干渉画像のアーカイブ例

 

「斜面変状を見つける」という点で重要なのは、「左側の画像」と「観測日の情報」になります。

 図の場合は、「2009320日から5月5日までの間の変化」ということになります。

 

 次に、画像についてみてみましょう。図2は図1の左側の画像の一部を拡大したものです。

図2 SAR干渉画像の例

 

赤丸が20092月以降大規模な地すべりが発生した七五三掛(しめかけ)地区になります。一方、白丸は月山の周辺です。

 全体的には水色や青の部分が多いですが、七五三掛地区や月山周辺、そしてその他にも所々、それ以外の色が見られることが分かります。

 とりあえず、今回は「七五三掛地区」を見ることにしますので、アーカイブにおける「七五三掛」の位置を特定しましょう。

 

 先ほどの、図1の左側の画像の下にある「電子国土表示*1」クリックしてください。すると、図3のような画面が表示されます。

 図3 電子国土Webシステム上に表現されたSAR干渉画像(ステップ1)

 

 図の状態は、まだSAR干渉画像が縮小されている状態ですので、見たい場所を中心に持ってきた上でマウスのホイールボタン等で拡大をします。

 図4 電子国土Webシステム上に表現されたSAR干渉画像(ステップ2)

 

 七五三掛の文字が電子国土Webシステム上で確認できるところまで拡大すると、図4のように赤丸で示した発色した場所もより明確に見えるようになります。

 拡大する大きさは任意ですが、このように注目する場所が明瞭に確認できるところまで拡大し、画像集として整理しておきます。

 例えば、2009320日〜55日、5月5日〜8月5日、6月14日〜7月30日のSAR干渉画像を七五三掛周辺で揃えると図5のようになります。

 

 図5 電子国土Webシステム上に表現されたSAR干渉画像(ステップ3)

 

 ここまでは、単に画像を集めるというところに着目しましたが、以下ではもう少し画像の集め方に注目します。

 

 SAR干渉画像は既存のアーカイブから集めるわけですので数には限りがありますが、図5のように同じ場所について複数のSAR干渉画像があると良いことがあります。

 すなわち、同じ場所で斜面変状の候補が繰り返し登場すれば、その場所に斜面変状がある可能性が高まります。

 干渉SARのホームページの各地区のアーカイブはそれぞれの地区を中心とはしていますが、注目するエリアによっては上記のように複数の地区に入ることもありますので、積極的にSAR干渉画像を揃えていきましょう。

 

これで、必要な材料は揃いましたので、次のステップで斜面変状を抽出します。

 

 ステップ2:「斜面変状の候補を抽出する」に進む

 

もしも、任意の地点についてSAR干渉画像を用意したい場合は、自分でその画像を作成しなければなりません。

以下のリンクに参考情報を示しましたので関心がありましたらご覧ください。

 

 オプション1:「SAR干渉画像を作成する」に進む

 

*1 電子国土Webシステム上でSAR干渉画像を表示するには電子国土WebシステムプラグインをPCにインストールする必要があります。また、本マニュアルではInternet Explorer 6以降の使用を想定していますが、それ以外のブラウザでもSAR干渉画像を電子国土Webシステム上で見ることは可能です。詳しくはhttp://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/sar/result/geotiff_cyber/caution.htmlをご覧ください。

*2 表示されているSAR干渉画像は全て次によるものです:Analysis by GSI from ALOS raw data of JAXA, METI